着心地,座り心地,乗り心地,使い心地,寝心地,住み心地,居心地・・・。どれも良いに越したことはありません。心地よさの正体は,どういうものなのでしょうか。適切な気温,適切な光,そういう物理環境を整えることも大事ですが,それだけで実現できるものでもありません。生きた心地がしない,なんてことにならないように。そんな心地を科学する研究室です。
具体的な研究テーマは多岐にわたります。
人間を中心として,最も身近な環境である被服から,室内・インテリア,建築,地域,都市,ときには地球環境に至るスケールまでを対象としています。
その研究領域は温熱環境を主としつつも,光・空気・音環境にも目を向けます。また工学的アプローチのみならず,これまで気象・気候学,地理学,生理学,心理学,社会学,民俗学,国語学,デザイン学などとの境界領域にも踏み込んできました。
以下の研究テーマはその一例です。
桜の開花やツバメの去来など動植物に見られる季節現象を生物季節,衣替えや空調機器の使用といった人間生活に現れる季節現象を生活季節といいます。桜の開花日を予想した桜前線のように,衣替え前線や空調機器の開始前線があると便利そうです。そんな未来を夢見る研究です。
電気やガスなどの人工のエネルギーが一般的でなかった時代にかたちづくられた伝統的な建築は,そのかたちや材料などを工夫することで生活に耐える環境をつくりました。そのため,ときに現代よりも優れた性能を備えていることがあります。そうした価値を再発見する研究です。
府大の所在地である半木町(ハンギチョウ)は,かつてはナカラギと読み,漢字では「流木」と表しました。普段は穏やかな鴨川ですが,ときに大きな氾濫を起こすことを教えてくれます。風や日陰など気候に由来する地名はどうなのでしょうか。その地の気候との関係を探ります。
暑さ寒さの感覚は,気温以外にも,湿度・放射温度(長波放射)・風速・代謝・着衣が関係します。さらに外に出れば日射(短波放射),部屋で寝転んだら伝導も関係します。これらが複雑に絡む感覚を物理理論によって捉え、一つの数字で表すことのできる指標をつくっています。
スースーと涼しい感じがする制汗剤や入浴剤などにはミントやユーカリの成分が入っています。涼しく感じるだけで実際には身体は冷えないので,冷房の節約への応用が期待されています。ではその涼感は気温が何℃下がるのと同じ効果があるのでしょうか。そんな疑問に迫ります。
夏場,アスファルト舗装道路からの照り返しはその上にいる人には相当なストレスです。アスファルトと一口に言っても透水性,遮熱性,保水性舗装など様々です。ある都市では選手に負荷が小さいからとマラソンコースを遮熱性舗装にしましたが,その効果のほどを検証します。
サクサク,ふわふわと言えば,なにやら美味しそうです。こうしたオノマトペは,独特の感覚が直感的に表現できる不思議な言葉です。温熱環境を表すときも使われます。では「ぽかぽか」というときの陽ざし・気温・風はどの程度なのでしょうか。気象条件と言葉を結ぶ研究です。
オフィスや講義室,リビングで過ごす間,人は多くの時間を椅子やソファに座って過ごします。その分,座面のむれは座り心地や知的生産性に影響します。しかし,体重で座面素材が圧迫される中でのむれの状態について,詳しいことはわかっていません。そのメカニズムに迫ります。
過去の修士・卒業研究タイトル一覧
修士論文
卒業論文
卒業設計
教授
京都府立大学卒業,名古屋工業大学大学院修了,博士(工学)。 九州芸術工科大学(九州大学)助手,島根大学助教授,奈良女子大学大学院准教授等を経て現職。
伝統的住宅の居住性能
ムレ性能評価手法
辻子の温熱環境性能